teikokukagekidan’s diary

主にハーメルンに投稿してる小説の設定

てゐ国歌劇団スペシャル† wound that I will never forget 第四話 深紅/辛苦の道

この物語は
てゐ国歌劇団の番外編
ポケモン
少しのグロ要素
申し訳程度のサクラ大戦要素
を含みます。これがダメという闇の力の僕たちはとっととおうちに帰りなさい


前回のあらすじ、ニーナをさらわれ、ミアレシティを占領されたてゐ国歌劇団はシャーヴァルの追っ手である「たらこ」を倒し、「ダークネスポケモン」について全員に説明するベノ、だがそこにこれまでの作戦を読みきったシャーヴァルが現れ、ダークネスポケモンの力を補足し、たらこを連れ帰ってしまう。そのことで躍起になり、焦るベノだったが「まお」によって気絶させられ、事なきを得る。一方で、変わるはずの無い物語が変わり始め、いよいよ「前回」には存在しなかった、語られることのなかった三人の物語が始まった…。

現在のチーム編成
ベノ&まおチーム ベノ まお ジーパン ライラ RTYUA くぃーん レジーナ もみじ タマズサ シュトラ わかな 

アデアチーム アデア ゆきの ライフ アベリア あるま ドラゴ しゅヴぁる カオティクス ラピス エクレール ジーパン(移動)

ラグナチーム ラグナ MEXさん このか アンペルト ルークス ぷりん らんまる ぼたん

9月17日



〔良心の天秤〕



現在地:ミアレシティ(ゴーストタウン)

シャーヴァル「…」
ミアレシティ、それはカロス地方の目玉と言っても差し支えの無いほどの大きな街であり、世界広しと言えどもミアレシティと同等の広さと大きさを誇る街は数えれるほどしか存在しないと言う。そんな巨大でいつもは活気の溢れる街が静まり返っている。深夜と言うのもあるだろうが音がしない。それもそうだ、今のミアレシティには人はおろかポケモンすら居ない。シャーヴァルがダークネスコピーで追い払ったからだ
シャーヴァル「何故だ…、俺は何を間違っている…、いや、何も間違っていないはずなのに…」
どうしてだ?どうして胸の奥が痛む。これが世界平和の第一歩だというのに。奴らは間違っている。俺が間違っているわけが無い、これは俺のやること、やらねばならぬ、成さなければいけないことだ。そうだ、これは序章。こんなところで挫けてはいけない。俺がやらなければ…多くの命を失うことになる、この力で…
シャーヴァル「誰も死なせない…!不殺による世界平和!俺にしか実現できない!!」

〔起源無き思い〕

???

シャーヴァル「これが戦争…」
???「どうだ?怖気付いたか?」
サングラスを掛けた中年の男がまだ幼いシャーヴァルに問いかける、男は笑っているがシャーヴァルは少し悲しげな顔をしているようにも見える。
シャーヴァル「人が倒れている」
???「そりゃ戦争だ、死人くらい出るさ、そんな仏から失敬したもの売って俺たちは明日を掴むんだ」
男はシャーヴァルにそう言うと崖から器用に飛び降りてあっという間に下に下りてしまう、シャーヴァルも焦りながら下に降りようとするがぎこちなく、足を踏み外して落下してしまった。
シャーヴァル「痛た…」
???「おいおい、大丈夫かぼーず」
シャーヴァル「問題ない」
頭部を強打しながらも痛みに耐えながらシャーヴァルは歩みだす、そして草むらからジーっと戦場を見渡す
シャーヴァル「これはどこが戦争しているんだ?」
???「さあな、聞いたところじゃ色んな国が秘密裏に関与しているそうだ、傭兵まで雇ってよくやるよ」
シャーヴァル「なんの利益が…」
???「密輸ルートの奪い合いとも聞いたことがある、麻薬や人身売買のルートに互いが邪魔しあってるらしい。これが激化すると俺たちでも商売のしようが無い、人間は空襲なんぞ平気でするからな」
シャーヴァル「過去の戦争の資料で見た現在禁止されている銃器が使用されてるようだが」
そう言ってシャーヴァルは兵士を指差す、幼くとも今と変わらず、幼さに反して博識な面が現実を見ているとも取れる
???「覚えとけ、あれは立派なルール違反だ、戦争にもルールはある。あれは回収するなよ、…ちなみになぜ禁止されているか知っているか?」
シャーヴァル「見たところ普通の銃器だが…、なぜ禁止されている?」
禁止にされていることは知っていてもなぜ禁止にされているかは知らず、シャーヴァルは首を傾げる
???「よく見ろ、あいつ等突っ込んでるだろ」
よく観察すると禁止されている銃器を使用している兵士が全員打ちながら敵陣に突っ込んでいる。あからさまに後続部隊との距離が見て取れた
シャーヴァル「あぁ…」
???「先頭の奴を見てろ」
彼らが注目した兵士は敵陣の一歩手前で撃ち殺され、頭を撃たれたのか宙に浮いてから…
???「伏せろ!」
ドオオオオオオン!!!
いきなり大爆発を起こした、たった今撃ち殺された兵士を中心にだ、敵の前線が引いて尚、禁止銃器を使用している兵士は進軍を続けている、彼らが撃ち殺されるたびに大爆発が起こり、戦場は混沌と化した
シャーヴァル「どういうことだ…!?」
??? 「よく出来てるだろ、あの銃器には三つの役割がある、一つは銃器のトリガーを放すと兵士の身体に巻いてある防弾チョッキ型の爆弾が爆発する仕組みだ、もう一つは二十の構え、チョッキが爆発しなかった場合の保険だ、こちらもトリガーを放すと銃器の中にある爆弾が爆発する、さらにこの二つの爆弾は遊爆すると互いの爆薬と化学反応を促し、爆発を数倍にする特徴まで兼ね備えている。そして最後に…あの銃器の名前はWD-898、別名ウォークダイナマイト、「歩く爆弾」と言う意味で、軍事用語で自爆を意味する、つまりあの銃器を託されると言うことは役立たずとして自爆して軍に貢献しろと言う意味になる。ようは捨て駒の賢い使い方だな」
シャーヴァル「…、これが外道…」
???「覚えておけ、ぼーず。世の中にはな、もっと物騒で外道に深く落ちた奴も居る、だが逆に考えればそいつにも外道に落ちた訳があり、そいつをそうさせた奴が居る。言うなればそいつらは枝葉なんだよ、本体は何処にも居ない、掃っても掃っても落ちた枝葉がまたいつか大木に育って本体が見えないくらい成長する。…むしろ枝葉が本体なのかもしれない、ポケモンが先かタマゴが先か、憎しみってのは憎しみを生むだけ生んで罪も無い奴らを平気で巻き込んでいく、それに起源なんか何処にも無い、誰にも止められない、無理なんだよ」
シャーヴァルは納得が行かなかった、彼は幼くして今も変わらぬ願いがある。それが…世界の平和、どれだけ非合法でもどれだけ汚いことでも平和の為にやってみせるという固い意志が彼を突き動かす
シャーヴァル「だったら…」
???「あん?」
シャーヴァル「俺の手段を選ばない平和の願いも…起源が何処にあるか…自分でもわからない、だから俺が居なくなっても誰かが平和を望むんだよな?」
男は呆然とした顔をすると腹を抱えて笑い出した、怒ったシャーヴァルの頭をぐしぐしとなでながらなだめつつ、口を開いた
???「すまんすまん、その発想は無かったんだ、ぶわっはっはっは!!」
シャーヴァル「俺は本気だ!いつかこの世界を平和にして見せる!!どんな手段を用いても!!」
???「…」
シャーヴァルの真面目な瞳を見ると男は真面目な顔になった、そして…
???「分かった、お前が言う平和ってやつを俺も信じてやる、ただし…言ったからには絶対にやってみろ、それが世界の全てを敵に回すことになってもな」
シャーヴァル「あぁ!俺がこの世界を平和な世界にしてみせる!!」

〔平和への一途な願い〕

現在地:ミアレシティ


シャーヴァル「見ててくれ、おやっさん…、おれはこの力で平和を築いてみせる!誰も殺さない…それがおやっさんとの約束だろう…!」
拳を握り、シャーヴァルは強く願う。今こそ約束を果たすときだと…
ステイル「リーダー、探しました、お帰りが遅かったので…」
シャーヴァル「すまん、心配をかけた」
ステイルは体格的にはシャーヴァルより大きい、だがそれでもステイルはシャーヴァル忠誠を誓っている。
シャーヴァル「ステイル」
ステイル「はっ、手筈通り伏兵を…」
シャーヴァル「いや、それとは別だ、お前とたらこに再度確認したくてな…」
ステイル「はい」
シャーヴァル「そのっ…あれだ!本当に…俺の望む世界へ付いてきてくれるのか…?」
普段弱みや感情を見せないだけあって苦手なのか不器用にステイルへ問いかける、ステイルはシャーヴァルのそんな一面を目の当たりにすると改まって膝を地面に付けた
ステイル「もちろんでございます、私はあなたに救われた身、あなたが助けの手を差し伸べていなかったら今頃はこの世におりません」
ステイルはアイアント同士の縄張り争いに負け、さらにはワザと瀕死にされた上で生き埋めにされていた、土葬にも考えられるが四肢を折り曲げられた時点で故意的であったことは明白である。ステイルを埋めた集団の話を偶然耳にしたシャーヴァルが集団から聞き出し、彼は助けられたものの既に死に掛けていた、その時、シャーヴァルが先導する者(ファースト)の力を使い、彼をダークネスポケモンとすることで命を救ったのだ
シャーヴァル「俺は怖いんだ…これが正しい事ではないかもしれないと心のどこかでそう思っている、だが…こうでもしないと…人間は争いを辞めようとしないだろう…?」


ステイル「天秤に掛かった良心…ですな、優しいあなた様らしく存じます…」
シャーヴァル「これは俺の暴論かもしれない、もしかしたら世界に認められず、この行為が失敗すれば俺たちは永遠に牢獄に閉ざされ、人間共のサンプルとして後時(あととき)を生きることになるかもしれない、それでも…」
ステイル「構いません、あなた様に頂いたこの命、永久にあなた様に捧げ、誠心誠意、私は仕えさせていただきます」
ステイルの忠誠心は本物だ、シャーヴァルは彼らを味方や盾にするために助けたわけではない。ただ命を救った、それだけだった、それが返ってシャーヴァルの心の中で疑問となって囁いている、それが…何かわからない。だからその答えを知る為に、彼は、シャーヴァルは改めて決意した
シャーヴァル「わかった…ありがとう、必ず世界を救って見せる。例え血塗られた道であっても…どれだけつらくても…この道を歩みきってみせる!」
幼き日の約束を守る為、そして…自分を慕ってくれる者達を守る為、世界を平和にする為、シャーヴァルは改めて決意した、必ず自分の心との戦いに、世界を敵に回しても勝つ事を…!

〔迫る魔の手〕



現在地:???

ジーパン「だからごめんて」
まお「今更気にはせんがな、せめて一言よこさんか。それとエクレールもだ、貴様も出る前に一言報告は無かったのか」
エクレール「いやぁ、緊急事態だし?総司令がどっかの誰かさんのせいでばたんきゅ~してるからその遅れを取り戻そうと~?」
まおは正論を言われ、舌打ちをするとめんどくさそうに「総司令代理として命ずる、適当にやれ、しくじるな」とだけ伝えて一方的に通信を切った。あるいみ「まお」らしいアホっぷりだなと二人して納得する。
ジーパン「おでかけ許可も出たし行くか」
エクレール「ですね、とは言ってももうメトロンん中ですけどね。アデアさーん!出してくださーい!!」
けたたましい蒸気の音と共にメトロンが発進する。
ジーパン「それにしてもだ、これはどうにかなんねぇだろ?」
現在ジーパンの足にはエクレールの部下である忍組の面々がかき集めた義足のパーツがパズルのように重なって足の形を保っていた…だが…
ジーパン「ぐにゅっ!」
すぐに足は崩れてジーパンはまた片足でバランスを取れずに、こけてしまう
ジーパン「痛え…」
鼻を打ったらしく、かなり痛そうだ。イラっとしたのかメトロンの壁を蹴る
ドラゴ「姐さんよぉ、やつあたりは感心しねぇぞ」
唯一アデアチームに居る地組のメンバーであるドラゴが釘を刺す、実は先ほどまおからジーパンが無茶をしないように制止してくれと頼まれていた、どうも地組のメンバーは一人一人が個性の塊であるため単独では何を仕出かすかわからない
カオティクス「後数十時間でホウエンに到着します、それまでの我慢です」
カオティクスもなだめるがジーパンは不機嫌を貫く、どうもせっかちな部類に入る彼女に数十時間と言う時間は我慢ならないのだろうか、いや…
ジーパン「…」
時間の話をしたくらいからジーパンの顔から感情が消えた
カオティクス「?、ジーパンさん?」
ジーパン「なんでもねぇよ…、だぁー!寝る!!」
いじけた様にジーパンは奥の部屋に片足で移動する。正直…見ていていたたまれない…
ライフ「…、大丈夫じゃないわよね…?」
いくら別の組と言えど仲間である以上、どうしても心配してしまう、もっともこのチームには俗に言う「お人よし」が多いことも上げられるが…
アベリア「なんとかしてあげたいけど…」
あるま「いくら小生が機械に強いといってもここまで砕けてしまっては直せる物も直せん…」
この中では唯一機械に触ってもよいとされるあるまが頭を掲げる、元々無理があるとは言え…それでもどうにか「形」にはなっていた、問題は粉々になってしまったことで失われた強度だ。
あるま「狙ったように足のスペアが自室に無いとは…」
実はジーパンの足のスペア自体はてゐ国歌劇団の地下にあったりする。だが…地下は現在封鎖され、今のてゐ劇は敵陣になっている。そのため忍組さえ通れず、苦肉の策として粉々になったパーツを一から集めたのだ
しゅヴぁる「だが…さすがエクレールの部下だな、本当に決め細やかなパーツまで採取したのか」
エクレール「ヴぇ!?は、はい!何せ優秀な部下しかいないもので!!」
緊張しすぎて言ってる事はハチャメチャだ、この編はそんじょそこらの女の子と変わらない恋する乙女状態だ
ゆきの「それはともかくとして…、どうするの?あのままじゃジーパンさんがまた起きて暴れちゃうわよ?」
ラピス「それは大丈夫…」
なぜかジーパンが入った部屋からラピスが注射器片手に出てきた
ラピス「しばらく目を覚まさない…」
ゆきの「それ…何…?」
汗を垂らしながらゆきのがラピスに問うがラピスは片手に注射器を持ったままであることに気がつくとしれっと注射器を仕舞いこんだ。だがその時メトロンの振動でラピスの袖から小さなビンがコトリと落ちた
ラピス「あ…」
近場のカオティクスが小瓶を拾うとうっかりラベルが見えてしまった
カオティクス「アデア発じょ…「いやあああああああああ!!!!!」」
大体何かを察したゆきの他兎組の女子より声が聞こえる、ラピスは無言で小瓶を奪うとカオティクスの首にマチェットナイフを突きつけてもう片手の人差し指を口に当ててカオティクスに優しくお願いする
ラピス「見なかったことで…」


カオティクス「見てま…せん…」
どうみても脅迫である

〔母の教え、最後の願い〕

???

ジーパン「んっ…」
まただ、この感じ…また…。爆炎が…
ジーパン「違う…あわては…あたしは…」
突如、爆炎が彼女を包み込むと…、彼女は荒野に居た…
ジーパン「ここは…」
???「どうしたのっ!そんなことじゃあなたのような道具が今を生きるなんて何時までたっても出来ないわよ!?」
突然聞こえた声に反応するように咄嗟に右に避ける、すると先ほどまで自分の頭があった場所にアーミーナイフが突きつけられていた
ジーパン「…えっ」
彼女は戦慄する、背筋が凍りつくような感覚に襲われ、またしても咄嗟に後に避ける、だが…
ザシュッ!!
ジーパン「あああああぁっ!!!」

鋭い痛みに襲われる、足を見ると真っ赤な血が太股付近からどくどくと流れている。その瞬間から彼女は目の前を睨みつける
ジーパン「道具…生きる…」
彼女の目から光が失われていく…まるで…
???「いいわよ!!そのまま…最強の戦闘マシンになるの!!」
ジーパン「…」
感覚が研ぎ澄まされる、確信できる、殺せる。あたしはコイツを殺せる
彼女がそう確信し、行動に移したとき、彼女は目の前の女性に馬乗りになり、全身が真赤に染まるほど
ジーパン?「排除…殲滅…抹殺…」
女性の首を、左胸を、頭を、目玉を、急所と思われる箇所を滅多刺しにしていた。そのたびに血は止め処なく吹き出し、返り血となって彼女に降りかかった


ジーパン?「敵は全て…、全て…排除、殲滅、抹殺…」
その顔に表情は無く、ただ動かなくなった「それ」を刺し続ける
ジーパン?「排除…」
あぁ…そうか…
ジーパン?「殲滅…」
お母さんが逃げろって言ったのは…
ジーパン?「抹殺…」
「戦争」から…か…
それは壮烈な死の大輪、彼女は…戦争を恨むあまりに自分から戦争に足を踏み入れ、傭兵としての訓練を受けた、戦争に復讐するためだけにだ、だが現実問題戦争は無くならない、彼女に訓練を施した女性は…
ジーパン?「…あたしの…二人目のお母さん…」
戦争に巻き込まれた孤児院の跡地から彼女を引き取った女性の傭兵だった、その女性は自身を殺す事で戦争への復讐を望む道具としてジーパンを育て上げた。永遠に戦争で戦い続ける人形として…。そんな二人目のお母さんの教えたことより、彼女は本当のお母さんの言葉を、願いを聞き入れた…だが…目の前に二人目の母の意思が…もう一人の自分がいることに変わりは無い
ジーパン?「なぜ本能を閉ざす」
冷たい目をした自分が目の前に立っている、その手にはナイフ、全身には真赤な血が身体の一部のように降りかかっている。恐らくは二人目の母の返り血だろう…
ジーパン「その力は使えない…、自分のためには…」
ジーパン?「本来の力を使えば、お母さんの教えを使えば!そんな身体にはならなかったはずだろ…」
ジーパン「…」
自分が自分の機械の身体を見る不思議な感覚に彼女はなんとも言えぬ感覚に陥っていた…
ジーパン?「あたしは五体満足で生きたい、生きて戦争に復讐する!そして女として人並みの幸せが欲しい!!お前のような身体は欲しくない!!」
ジーパン「あわてだって…本当は…」
ジーパン?「なら何故その力を使わなかった!?」
自分に捲し上げるように怒声を浴びせられ、彼女は返す言葉も無くただ立ち尽くしていた
ジーパン?「お前がその力を!本気で使えば良かったんだ!!そうすれば…!今頃お前も幸せだったんだ!!!」
ジーパン「ぐぅ…」
ギリリと歯を擦りあい、彼女は涙を流していた…。彼女の最大のコンプレックス、それがこの身体だ、この身体のせいで…彼女は…。
ジーパン?「見ろ!泣くほど悔しくて!泣くほど自分の行いに後悔があるなら!!死んで詫びろおおおお!!!」
もう一人の自分がナイフを構えてこちらに跳んできた、だが…彼女は避ける気力も無く、ただその鋭い刃をその身に受け止めていた。もう一人の自分は馬乗りになり、何度もナイフを突きたてる。その度に指された箇所から血が吹き出し、すぐに傷が再生する。
ジーパン「ぐうぅ…」
痛い、思い出す。やめろ…
ジーパン「あわては…」
あわてが後悔してるのは…
ジーパン「後悔していない…」
こんな身体になったことじゃない…
ジーパン?「嘘付け!!じゃあその涙はなんなのさ!!?」
もう一人の自分もボロボロと涙を流す、それでいてナイフを刺したまま彼女を睨みつける。全身が血まみれになりながらも…その瞳に涙を浮かべながら
ジーパン?「返せよ!!あたしの身体を!!あたしの幸せを!!」
ジーパン「後悔してるのは…」
護れなかったんだ、アイツとの愛を…
ジーパン?「…!」
だが…彼女はそっと…ナイフを刺し続ける自分を抱き寄せ…頭をなでる
ジーパン「お母さんの警告通りにしないで戦争に自分から足を突っ込んだ…その結果…愛しい人と出会えたけど…その人を傷つけた…今も苦しめてる…愛し合えず…素直になれなくて…あわては…べノのことが…大好きなのに…アイツの子供を産んでやりたいくらい想っているのに…!こんな事になって…その事に後悔してる…」
そう…彼女は…もう一人の過去に縛られる自分に打ち明ける…、その瞬間、心の闇が晴れたように過去の彼女は…泣き崩れ、彼女自体も瞳に涙を浮かべながらも…ぐっと堪えて涙を流すまいと我慢していた…
過去のジーパン「…うっ、うぅ…」
ジーパン「この力は…使っちゃいけない…もう…大切な誰かを護る為以外には使っちゃいけないんだ、あんたにもその時が分かるよ…」
彼女がそう言うと…過去の自分は…
過去のジーパン「…うん、あたしも…誰かを護る為に使う…、そして…、この事を次の自分に教える…」
ジーパン「あぁ、その時になったらさ、この身体の意味が分かるよ、必ずね」
光となって消えていった…

〔悪いことだけじゃない〕


ジーパン「んっ…」
ライフ「あら?起きた?」
ジーパン「ライフ…」
彼女が目を覚ますと…目の前にライフが座っていた
ライフ「大丈夫?すごくうなされてたみたいだけど…」
とても心配そうにライフがおでこに手を当てたり脈を診たりする、ジーパンは照れくさそうに手を払う、実は意外なことにこの二人、友好関係がある。不死と死期が迫る者という正反対の
ライフ「それにしても驚いちゃったわ、まさか下半身が機械だったなんて」
ジーパン「うっ、うるせぇ、悪いか」
ライフ「ううん、私だって似たような物よ?それに隠せるだけいいじゃない、こっちは隠す為にフードを被らないといけないのよ?」
ため息混じりにライフが愚痴を言う、そう…彼女もジーパンと同じ…と言えるかは不明だが右目から下半身までとても大きい生々しい傷跡が残されている
ライフ「そう考えると日常の暮らし方が羨ましいわ…」
ジーパン「こっちだって風呂大変なんだからな!特にこのゴム鞠が…」
そんな会話を延々を話す、今の彼女にはたくさんの仲間が居る、愛する人も、護るべき人も…

〔心に封じ込めた闇に〕


ベノ「なろぉ…あのバカ魔王!本気で絞めやがって…」
首をゴキリと鳴らしながら部屋のドアを蹴り飛ばす、時間を見ると深夜の4時だ
ベノ「チッ、胸糞悪りぃ…日を跨ぎやがったか…」
何かが俺の中で渦巻いてやがる…なんだ…この感覚…シャーヴァルのやろうに会ってからどうも調子がでねぇ…怖い…恐怖だと…?俺は何を恐れている…?シャーヴァルのやろうに会うたび…俺の中の何かが…思い…出さ…れ…
タマズサ「べノはん!」
もみじ「べノっ!!」
そこに偶然通りかかったタマズサともみじが彼を支え、部屋へと連れて行く、ベノは自分ではまともに歩けないくらい衰弱していた、そしてそのことに自分で気付いていなかったのだ
タマズサ「べノはん…あのシャーヴァルって人と会ってからなんかおかしいで…!?」
ベノ「いや…大丈夫だ…アイツは…俺が…」
タマズサ「そんな身体じゃ勝てるもんも勝てへんて!もみじ!まおはん起こして!!」
もみじ「うん!!」
数秒後。もみじがまおをバーニングダイブで叩き起こしたらしく、その悲鳴で結果的に全員が飛び起きてしまった

しばらくして全員が揃い踏みとなり、ベノの容態を見図る。タマズサによれば先ほど気を失い、うわ言の様に「俺は…俺は…」とうなされているという
タマズサ「どないしょう…」
まお「つまりはタマズサともみじが手洗いから戻るとこのアホがフラフラと出歩いていたと」
もみじ「う…うん…」
事情を聞き、まおは少し考えると…
まお「レジーナ、アデアのチームを全員叩き起こせ、くぃーん、ぷりんに連絡してラグナのチームも叩き起こせ」
なんとつい数時間前に寝たチーム全員を叩き起こせと命令したのだ

アデア(電話)「こちらアデア、全員揃いました」
ラグナ(電話)「ラグナだ、作戦実行まで後二時間しかないが…」
まお「揃ったか、ではまず事情を説明しよう」
するとまおはベノが起き、容態が芳しくないことを告げた、全員驚いて心配するがまおはそれを制止した
まお「まあ待て、本題はこれからだ、これは非常に不謹慎で無礼なのだが…今からべノの心の中を見ようと思う、これは今、べノがどうしてこんなことになっているのか、それを解明するためだ。そのため…他言無用で頼む」
MEXさん(電話)「まおっ!なんてことを!!?」
今、地組が…いや、全員が目を疑っている、あのプライドが凄まじく高いまおが土下座をしたのだ
まお「べノとは長い付き合いだ、正直我もこのようなことはべノを裏切る行為だと承知の上だ、しかし!我はべノの苦しむ姿を見たくは無い…!そしてこやつの秘密を護ってくれるというなら…我は喜んで命を絶つ、それほどの覚悟の上だ…!べノがどうしてダークネスポケモンとなったのか、そんなことはどうでも良い!!我は!純粋にべノの心の闇を祓いたいのだ!!頼む!!!」
まおが床に頭を付け続ける、それほどにベノを想い、信頼している。そのことを再認識した全員が他言無用の誓いを誓った
まお「ありがたい…感謝する!」
MEXさん「はわわ!!もう!頭を上げてください!!まお!!」
地組の面々は取り乱す、この辺りがまおをいかに信頼しているかが見て取れる
まお「では…電話越しだが…不思議な体験をしてもらう、意識というのはネットワークのような物だ、距離や世界など関係ない、ゆえにこれよりシュトラの能力でべノの意識の中に行こうと思う」
シュトラは特殊な能力の持ち主で、相手と意識を共有し、考えてること、感じてることなどを自分の意識として体験することが出来る、そしてそれを他社へ橋渡しも出来る
シュトラ「…ただし、これだけの人数だから何時総司令の意識から飛ばされるか分からない…それでもいいなら…」
まお「かまわん、一刻もこの闇を祓ってやらねば…」
シュトラ「わかった…意識を集中させて…」

〔深淵の憎悪〕


まお「むぅ…、ここは…?」
まおが起き上がると同時に全員が起き上がる、どうやら無事に全員が来れた様だった
ラグナ「ここがべノの心の中…?」
シュトラ「…そう、ここが総司令の心に当たる場所だよ…」
全員が絶句した、ベノの心の中は…上を見上げればドス黒く、暗雲が雷鳴を響かせており、下を見れば死滅した大地、地平線の向こうには果てしなく黒い闇が支配していた
アデア「これは…」
まお「こんなにも荒みきっていたのか…」
ラグナ「嘘だ…いつも笑顔を絶やさないアイツが…」
ベノと「てゐ国歌劇団で」もっとも長い付き合いのラグナは言葉すらまともに口に出せなかった、自分が思っていた以上の現実が…そこにはあった、だが…
ジーパン「ラグナ、まだマシなほうだ、こんなに荒みきってんじゃねぇよ、『ここまで抑えてんだよ』」
そういうとジーパンはスタスタと歩き始めた、それに付いて行くように全員が歩み始めた
ジーパン「…、まおのバカが土下座までしたんだ、もしここから出されたら…あわてが知る限り、べノの過去を話してやるよ」
ラグナ「あぁ…」
あまりに酷すぎる、歩くたびにゴリゴリと体力を蝕まれるような感じが襲い掛かる、ベノはいつもこんな思いをしながら日常を過ごしていたのだろうか…
ジーパン「シュトラ、心の扉はあるのか?」
シュトラ「ある、もうすぐ見えるはず」
そう言った矢先に扉はあった、だが…その扉は美しくもどこか悲しい深紅の色をし、茨によって閉ざされていた。
シュトラ「おかしい…」
まお「だな、本来心の扉とはその者のイメージカラーからなる、本来ならべノの扉は紫色になるはずなのだが…」
ジーパン「…なるほどな」
一人だけ、何故この色なのかを理解した人物が居た、ジーパンだ
ジーパン「入ればわかる、行くぞ」
そう言って茨を手で除ける、不思議なことに彼女の手は一切傷つかず、まるで棘が無いように扉から離れた
まお「ほう、ジーパンに心を許している…か」
ジーパン「とっと入れ、お前らじゃ通れねぇよ」

扉を抜けた先にあったのは…どこか懐かしい場所であった
まお「ここは確か…」
ラグナ「どこかで見たことが…」
ぷりん「たぶんだけど~…」
くぃーん「今は私とぷりんしか分からないと思う、ここは恐らく…」
ぷりん「カントー地方にあるトキワシティ~?」
ラグナ「そうか…、カントー出身はべノとニーナを除くと二人だけか」
まお「べノの出身地がカントー地方だとは聞いていたが…、なぜここなのだ?」
ジーパン「…」
またしてもジーパンが率先して歩き出した、トキワシティに…ではなく、真後ろの道にだ
ライフ「そっちは…?」
ジーパン「アイツのルーツこっちにある、道は分かる」
ラグナ「…!」

ジーパン「居たぞ」
まお「あれは…」
トキワから離れたこの場所にあったのは小さくも広く、多くのポケモンが住む村落であった。そしてその中を走り抜ける少年、幼くても分かった、ベノだ
ベノ?「母さん!がんばって!!」
幼いベノは自分の母親を応援しているようだった、そして程なくして産声が聞こえてきた
ベノ?「やったあ!俺お兄ちゃんになったんだ!!」
???「おう、今日から兄貴になるんだ、踏ん張れよ!」
ベノ?「うんっ!」
まお「兄…ということは今生まれたのは…!?」
ジーパン「ニーナだな」
そう言って物陰に胡坐をかいたジーパンはどこか真剣な眼差しでベノを見る
ラグナ「あれって近づいたらどうなるんだ?」
まお「べノが気付いた瞬間にバレるぞ」
さらっと言う辺り前科があるような言い振りだ、まおならやりかねない
ジーパン「まおの言うとおり…こっからは絶対手ぇだすなよ」
ジーパンが全員に釘を刺した瞬間、先ほどまでベノ達が居た場所に鈍い色の光線が放たれ、爆風がこっちにまで飛んできた
まお「むぅ!今のは…!」
アデア「破壊光線!?」
それを皮切りに次々と様々なものが飛んでくる、あっという間に目の前の村落は大混乱に陥った
まお「これは…!?」
ジーパン「今や便利なモンが出回ってるよな、羽根やらサンドバックやら…」
その言葉を聞いてしゅヴぁるたちは何をしているのかが分かったようで悔しさのあまり、握り拳を血が出るほど握り締めていた
カオティクス「ど…どうしたんですか!?一体何が…」
しゅヴぁる「…努力値…だろう…?」
ジーパン「正解だ、昔は全能力値に努力値を振れた、だがそれを「この時代」でやろうとすると…ざっとニドラン千匹を倒せばカンストするらしい、俗に言う…『ニドラン千匹狩り』だ」
その一言は…後ろで行われている惨劇が…さらに長引くという最悪の一言だった…
ラグナ「倒すとはいえ…オーバーキルにも程があるだろ…!?ここまでして勝ちがほしいのか!?」
まお「…すでに数百のニドランが死に絶えているな…、勝つ為に手段を選ばないのは感心せんな、戦争にもルールはあると先ほど言った奴が居ろう」
ジーパン「人間が努力値なんか解明しなければ…、べノは何も無く生きれた、人間に憎悪を持つことも無かった、『』でもあれば努力値の見方も変わってこんな大量虐殺なんか起こらなかったのによ…」
まお「…まさかな…いや…」
ジーパン「まお、こう思ってるだろ?『トレーナーの数が少ない』」
珍しくまおが図星を付かれたことに驚き、汗を垂らした
ジーパン「…一~二年後には五倍くらいの人数になる、つまり…」
アデア「…少なくとも試合に使用されるポケモンの数だけ…この殺戮が」
ジーパン「そうだ、そして…アイツは今回で母親を亡くした」
まお「なんと…」
ジーパン「それだけじゃねぇよ、目の前で友達が大量に殺されたり大怪我負わされてんだ、それが数年後には五倍以上の数が犠牲になる。『この時点で』てめぇらの人間嫌いなんかとっくに素っ飛ばしてんだよ」
幼少期の記憶、その時点で自分たち以上に人間を恨んでいる、なのにベノは…いつも笑顔で、人間に関わろうとも穏便に済ませたり…とにかく関わらないようにしている、もっとも…立場上、てゐ国歌劇団で一番人間と関わらなければいけないのだが…
ラグナ「…」
ラグナロクは…人間に深い憎悪を持っていた、生まれたときから捨てられて…仲間も殺されて…それでも二人の仲間と生き延び、人間を殺してきた、それを止めてくれたのが他ならぬベノだった、そして約束した、『もう二度と人間を襲ったり、殺さない』と…その約束をしてくれたべノが…
ラグナ「あの約束を…?」
ジーパン「どうやらべノが深く思ってるところがループしてるらしいな、次は何年後の過去に行くのやら…」
ジーパンがそう言うと時空がねじれ、続いて今より少し若いくらいのベノと先ほどベノの隣に居た男が会話をしていた
ベノ?「だから言ってんだろ!!俺はここを出る!!」
???「バカ言うな!!てめぇ母さんの言葉忘れたのか!?」
ベノ?「忘れるわけねぇだろ!!クソ親父!!」
???「てめぇの意見は理にかなってねぇんだよ!!せめて後だけでも継げってなんでわかんねぇんだ!!」
ベノ?「母さんの言葉に従うとは言った覚えはねぇ!!俺は俺の道を行く!!」
???「このっ!バカ息子が!!」
ニーナ?「もうやめて!!」
そこにニーナと思わしき少女が割り込んできた
べノ?「ぐっ…ニーナ!」
ニーナ「お願い!せめてべノの名前だけでも受け継いで!お兄ちゃん!!」
ラグナ「なっ…!?」
まお「べノの名前だと!?どういうことだ…!?」
ジーパン「黙れ、後で説明する」
ベノ?「…わかった、べノの名前は継ぐ、だがな!その儀式が終わり次第!俺はここを出るからな!!」
???「好きにしろ!!」
その声を聞いた瞬間、突然激しいノイズが襲い掛かる、耳が割れそうになり、耳をふさいでもなお、そのノイズはけたたましく鳴り響く
シュトラ「隊長…!」
まお「出ろ!!」


〔心に辛苦、振り向く勇気〕

まお「ぐあっ!」
ラグナ(電話)「ぐぅ!!」
ジーパン(電話)「きゃあ!」
全員が一気に現実に戻される。あれから時間は経っておらず、ベノも目を覚ましていない
まお「先ほどのノイズは…」
シュトラ「…たぶん総司令の心の闇…、あれから先に踏み込めば逆に意識を侵食されかねなかった…」
ジーパン(電話)「なろぉ…しかたねぇ…補足説明だ、最初に行った場所、あれは22番道路だ、べノはあそこの出身でな、あの惨劇から三年後にはジョウトの35~36番道路に移住した、だけど人間への復讐を諦め切れなかったべノは…「おい、何ペラペラ人の過去を話してんだ、てめぇ」」
ジーパンの説明に横槍が入った、その声の主は不機嫌そうにこちらを見ていた
ベノ「てめぇら…さっきまで俺の心を見てやがったな…?」
若干キレ気味ながらもベノが起き上がった、すると頭を掻きながら口を開く…
ベノ「知られたからには教えてやる…俺は20年ほど前、カントー地方の22番道路に生まれた、そこの族長の家計にな、俺は今の名前とは違う名前を付けられた、だからこの『ベノホーン』って名前は本名じゃねぇ、本名は…一族の掟で話せねぇ」
まお「…一族の掟、ニーナが進化できない理由だったな?」
ベノ「あぁ、一族の掟には大まかには三つある、一つ、一族を継ぐ場合は進化しなければならず、それ以外は進化してはならない、進化した場合は一族追放。二つ、長の証である道具とペンダントを作らなければならない。三つ、『べノ』の名前を継いだ時、今までの名前は捨てる必要がある。こんなところか…」
どうやら他にもあるようだがベノは強引に話を切った、その顔からはいかにも「めんどくさい」という文字が顔に書いていた
ベノ「俺とニーナがつけてるペンダントが長の証であるペンダント、そして…この剣が…俺の長の証の道具だ。だけどな…俺は人間が憎くてたまらず、一族から出ることを決意した、全ては復讐の為だけにだ」
ぞわっと邪悪とも思える邪気が部屋を包み込む、これが人を憎む力…
ベノ「母さんは俺に一族を継いで平和を築けと願った、だから俺は一族を継ぐだけ継いで出て行った、一族の禁忌まで犯してな…」
手に持つ剣を握り締め、邪気を引かせる、ベノはここまでの邪気を、憎しみを、怒りを、殺意を、憎悪を、たった一人で押さえ込んでたのだ、誰にも気付かれないように
ベノ「一族の道具作りでやってはいけないこと、それが武器を作る事だ。俺はそれをワザと犯した、思えばどうしてそこまでやれたのかが分からなかった、だけどな…、俺の…この憎しみは理性を狂わせる。それが針組の結成に繋がり…、今に繋がる…!そしてシャーヴァルと再会した日から…俺の中の何かが思い出される…それが分からない…!」
ジーパン(電話)「お前よぉ…、本当のバカだな!」
ため息を混じらせ、後髪をかき上げながらジーパンが言い放つ、いかにもイライラしているのが目に見えている。
ジーパン(電話)「うっぜぇんだよ、まだわかんねぇのか?てめぇは恐れてんだよ!」
ベノ「恐れる…、シャーヴァルにか…」
ジーパン(電話)「まお、そいつをぶん殴れ」
まお「これでよいか」
ゴスっとピコピコハンマーがベノの頭にめり込む、
ベノ「てえな!!何しやがる!?」
ジーパン(電話)「確かにシャーヴァルにもだろうがな、お前が一番恐れてるのはそんなちんけなモンじゃねぇだろうが!てめぇはシャーヴァルに恐れてんじゃねぇ!『死』に恐怖してんだよ!!」
ベノ「…!」
的を射られたその言葉にベノはドキっとした、恋などではない、指摘された事で自分の中の何かが確信したからだ
ジーパン(電話)「確かにシャーヴァルの野郎が発端だろうがな!お前は唯一自分を殺せる相手と再会してビビってんだよ!!過去の惨劇にダークネスポケモンという鍵を掛けて!お前は過去と向き合わずに逃げ惑ってんだよ!!その証拠にてめぇの扉は茨に包まれ!深紅の血で染まっていた!過去の蛮行で今の自分を隠すように!!」
ベノ「…(ギリッ)」
ジーパン(電話)「逃げんな!向き合え!過去の自分と!そして伝えろ!自らの答えを!無力さを!弱さを!」
ベノ「俺は…、死を恐れてる…」
その一言は、誰もが心のそこから思っている
ベノ「母さんや仲間を護れなかった無力さが…」
生きたいという欲望、強欲な生存本能。
ベノ「俺に人間と同じことをさせた…」
血を廻らせ、息を吸い、吐く、その一連が
ベノ「それは紛れも無く俺の弱さだ…」
長らく忘れていた命(生)への執着を
ベノ「だから…俺はこの弱さを受け入れる」
沸々と思い出させ、過去と向き合う強さへと…昇華し…
ベノ「受け入れた上で…世界を護って見せる」
未来を見つめる瞳に光を灯す!誤った過去を再現させない為にも!!
ベノ「シャーヴァルの奴に!俺と同じ過ちをやらせない!!絶対だ!!!」
てゐ国歌劇団の頼れる総司令が今!ここに復活した!!


次回予告
ベノ・ジーパン・シャーヴァル「「「自分のやりたいことをする!誰が何を言っても構わない!!これが俺(あわて)達だ!!!」」」
過去を過ちとし、約束を守る為に不殺で平和へと導こうとするシャーヴァル
過去の自分の不始末を後悔し、それでも愛する人のために生きるジーパン
過去が閉ざした自分の弱さと向き合い、未来を見つめるベノホーン
三人の決意は固まり、彼らは己が『道』を貫くために進もうとする。その戦いに悪は無く、掲げるは自分たちの正義、ただただ平和への思いがぶつかる、そんな時。一つの知らせが二つの正義に衝撃を走らせる、それは吉報か凶報か…それとも…


次回 てゐ国歌劇団スペシャル† wound that I will never forget 第五話 未来過去今(これ)から




過ちを繰り返さない不殺の平和自分の弱さと向き合う未来、あなたならどんな思いでどちらを選ぶ?